愛すること、愛されること

「今日は私がクラウドを気持ちよくさせるの」
彼女は恥ずかしそうにそう言った。



一週間ぶりの帰宅だった。
遠出の配達が入ったときは数日家を空けることは多々あったが、それでも長くて三日程度。
一週間もの不在は今回が初めてだった。
だから、ティファ不足の自身の身体は早急に彼女を欲していて……
シャワーを浴びて部屋に戻り、がっつくのはかっこ悪いと思いながらも、部屋で先に待っていたティファをすぐに抱きしめた。
一週間ぶりに抱きしめる彼女の温かさや柔らかさが溜まっていた疲れやストレスを緩和させる。
そして心が満足したら今度は身体が満たされたいと本能のままにキスをする。
その流れに任せて、飢えた狼のように彼女をベッドに押し倒した。
すると、それまでされるがままだった彼女が慌てた様子で俺を制す。
「あ、クラウドちょっと待って」
俺は仕方なく彼女に覆い被さっていた上体を少し浮かせた。
「……あまり待てないんだけど」
そう言うと、ティファが苦笑った。
俺がお預け食らって不貞腐れた顔をしたからだ。
そんな俺にティファは、
「あのね、今日はね……」
そう言って、俺の身体をすり抜けてベッドから起き上がる。
同じく起き上がってベッドに腰かける俺にティファは顔をほんのりと赤らめて言った。
「クラウド、Tシャツ脱いで?」
喜んで脱ぐ。
なんなら下も脱ごうかと言いそうになったが、それは怒られそうな気がしてやめた。
そんな俺の前でティファは自分のポケットに手を入れて、そこから薄手のハンカチを取り出した。
何をするのだろうかと思いつつも、黙って行動を見守る。
するとティファは俺の前に跪いて、そして言ったのだ。
「今日は私がクラウドを気持ちよくさせるの」
クラクラと目眩がした。
ティファの口から出た衝撃的で魅惑的な言葉に思考が一瞬にして止まる。
そんな固唾を飲むしか出来ない俺の両手首をティファはハンカチで縛った。
「な、なんで縛るんだ?」
やっとのことでそう聞くと、
「だって、こうしないと……」
ティファは言いながら上目遣いで俺を見た。
「クラウド……すぐ私に触るから」
これはなにかのご褒美なのだろうか?
思わず天を仰ぎ、真面目に働いてよかったと神に深く感謝した。

「痛くない?」
手首を縛り終えたティファはそう言って、俺の顔を心配そうに覗き込んだ。
同時にふわりとティファの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
その匂いに誘われて思わず手を伸ばして抱きしめそうになったが、拘束された手に気付いて一瞬浮かせた両手を力なく下ろす。
「ああ、大丈夫だ。痛くない」
痛くはないがもどかしい。




―― 今日は私がクラウドを気持ちよくさせるの
クラウドの両手首を縛りながら自分の放った言葉を思い返して赤面する。
でもそう言った言葉にウソはない。
今までクラウドに気持ちよくさせられていたのと同じくらい、今日は自分がクラウドを気持ちよくさせたいのだ。
そう思うきっかけとなったのは数日前のあの雑誌――

手首を縛り終えてティファは立ち上がる。
すると、その動きに合わせてクラウドがティファを見上げた。
自分がこれからなにをされるのかわからない、そうした緊張がクラウドの顔に表れている。
そしてティファ自身も、これからしようとすることを考えると緊張した。
まずは……どうするんだっけ。
雑誌に書かれていたことを思い出す。
そうだ、まずは胸。
ティファはそっとクラウドの逞しい胸に触れた。
着痩せするタイプなのか、クラウドは服を着ていると細く見える。
でもこうして着ているものを脱ぐと、鍛え上げられた筋肉がしっかりとついていることがわかる。
そんな引き締まった身体を前にするたび、クラウドを男の人だと改めて意識するのだ。
それは身体を重ねる関係となった今も……
いい加減慣れてもいいはずなのに、だけどやっぱりドキドキするのだ。
そうした緊張のまま逞しい胸に指を滑らせる。
そして胸の敏感なところをすっとひと撫でした。
クラウドが一瞬ピクッと身体を動かす。
反応があったことを正解と思ったティファは、次に唇をそっとそこに押し当てた。
途端、クラウドが身を捩った。
「ちょ、ティファ、くすぐったい」
意図しない反応にティファは戸惑い、くすぐったそうに笑うクラウドの顔を見る。
(……)
笑わせるつもりでそうした訳じゃないけど、それはそれで普段あまり見ない顔。
そんなふうに笑うクラウドがなんだかかわいくて少しドキドキした。
いや、違う違う。
本来の目的を忘れそうになって、ティファは心の内で頭を振った。
なにがダメだったんだろうか。
自分がクラウドにそうされたら気持ちいいと感じるのに……
ティファはもう一度、やさしく胸を撫でてみた。
クラウドはまたピクリと身体を動かすが、気持ちいいという感じではないことに気づいた。
それと、両手を前で縛ったのがそもそも間違いだったことにも気づく。
前だと腕が邪魔で胸全体を上手く触ることができないのだ。
「ごめんね、クラウド。縛るの、後ろにするね」
ティファはそう言って一度縛った両手首を開放し、クラウドの背後に回った。




ティファがなにをしたがっているのか、大体の察しはついた。
先に言ってたとおり、自分から積極的に働きかけて俺を気持ちよくさせたいのだろう。
だが、ティファには悪いが、はっきり言って今の段階では気持ちいいにはほど遠い。
だけど一生懸命なティファがかわいくて、そしてなによりそう思ってくれる気持ちが嬉しくておとなしくされるがままでいる。
しかし……
クラウドは後ろ手に拘束されながら思う。
なにがきっかけで俺を気持ちよくさせたいと思ったのかは後で聞くとして、いきなりの拘束プレイとはなかなかハードルが高い。
こういうことに関して、特に消極的で受け身のティファを思うと尚更だ。
ていうか、そもそもそうした特殊プレイがあること自体知らないと思うのだが……
誰かの入知恵か?
一瞬そう思ったけど、でもおそらくティファは純粋に俺から手出し出来ないようにするためだけに縛っているのだろう。
俺にそうしたマゾ的な趣向はないが、好きな奴ならもうこの時点で興奮しているのだろうか。
そんなことを考えているうちに俺の両手は後ろ手に縛られた。
前で縛られていた時は上下に動かすことぐらいはできたが、後ろ手に拘束されたことで今度こそ完全に自由を奪われる。
(……)
なんだかこれはこれで新しい性癖に目覚めてしまいそうになった。
まあ正確に言えば、俺がティファの両手の自由を奪い、あれやこれやとしたいのだけど。

後ろに回っていたティファが俺の前に戻った。
あまり上手くいってないことを自覚してるのか、少し悄気げているように見える。
俺からすればそれがまたいじらしくてかわいくて抱きしめたくなるのだが、いかんせん今は自由を奪われてる身。
なら、せめて……
「ティファ」
名を呼ぶと、ティファは「ん?」と少し首をかしげて俺を見た。
そうした何気ないしぐさに俺がいちいちドキッとさせられていることを彼女はきっと知らない。
「俺、キスしたいんだけど」
そう言うと、ティファはパッと頬を染めた。
そうする顔を見て、自身の頬にも熱が集まるのを感じる。
ティファが照れると俺にも伝染るんだよな……
それでもティファの前では少しでもカッコよくありたい。
照れを押しやってティファを見つめる。
すると、ティファが顔を赤くしながらもゆっくりと近づき、俺の顔を両手で挟むようにした。
座っている俺は必然的に立っているティファを見上げるような形となる。
手を拘束されているのも相まって、ティファに服従させられているような妙な感覚に陥った。
初めてのその感覚に戸惑っていると、顔を挟まれたままティファにキスをされた。
同時にさらさらと流れ落ちた長い黒髪に囲われる。
髪の香りとやわらかな唇の感触に俺はあっさりと情欲を煽られた。
自由が効かない手をもどかしく思いながらも、口内で必死に彼女を追い求める。
そうする俺に応えようとするティファの拙さがまた興奮する材料となって、もっとと欲しがった。
なのに、唇はすぐに離された。
これからというところで終わりにされて消化不良感は隠しきれない。
そうした俺は物欲しそうにしてたのだろう。
俺を見るティファの顔は少し嬉しそうに見えた。
気をよくしたらしいティファは、そのまま唇を俺の首筋に這わせる。
肌に触れる吐息で背筋がゾクリと粟立ち、同時に声が溢れそうになって咄嗟に唇を噛みしめた。
かろうじて声は漏らさなかったが、息を飲んだ様子はティファに伝わってしまったか。
首筋を這うようにしていたティファが一瞬動きを止め、ふいと顔をあげて俺を見た。
声を噛み殺すようにする俺を見て、ティファは明らかに嬉しそうな顔をした。
それを少し悔しいと思ったのは男としてのプライドか。
支配されている屈辱感に似たものを覚えた。
そんな俺の唇にティファは軽めのキスをすると続きを再開。
耳裏から首筋にかけてゆっくりと唇を這わせてきた。
肌に触れる唇と舌の温かさ、やわらかく甘い吐息がゆっくりと理性を溶かしていく。
そして、顔を寄せられることで身体は必然的に密着し、ティファのふっくらとした胸が自身の胸に押し当てられて否が応にも全神経がそこに集中した。




クラウドの首筋に唇を這わせながら、ティファは内心ずっとドキドキしていた。
さっき見た、声を我慢するクラウドの顔。
眉間にしわを寄せて唇を噛みしめるその顔があまりにも艶っぽくて、胸のドキドキが止まらないのだ。
―― 声を我慢するな
情事の最中、クラウドが私によくこう言う。
私が本能的に出す声にとても興奮するらしい。
でも私は自分が出すそんな声が恥ずかしくて我慢していたけど、でも今ならクラウドの言うそれが少しわかるような気がした。
私もクラウドの感じた声を聞いてみたい。
そうした思いは、自分でも普段では考えられないくらい積極的な行動として現れた。
クラウドはおそらく首筋が弱いとみえた。
だから耳元から首筋にかけて唇や舌で念入りに愛撫した。
その予想はおそらく当たっていて、度々ピクッと反応する身体は明らかに感じていることを私に教えてくれていた。
なのにクラウドは頑なに声を出さない。
それを少しもどかしく思いながらも粘り強く続けていたのは、声こそ出さないものの息づかいはだんだんと短く浅く、そして少し荒くなってきたからだ。
そうした興奮気味の息づかいは自分に欲情しているように感じて嬉しくなった。
もっと欲情してもらいたい。
ティファは一旦クラウドから離れて立ち上がる。
そしてクラウドが自分を見ていることを意識しながら、着ていたTシャツの裾をゆっくりと引き上げて脱ぎ、パジャマ代わりにしているハーフパンツをおろした。
脱いだ服の下は新調したばかりのキャミソール。
細く繊細な肩紐、胸元には可憐なレース、そして薄い生地は身体のラインがわかる程度に透けている。
明らかに普段使いではない下着。
クラウドに視覚からも感じてもらいたくて、今日の日のために用意したものだ。
そうした策略は成功したのか、クラウドが私の身体を凝視している。
それに対して恥ずかしさももちろんあったが、それよりもなぜか自身も色欲をそそられてクラウドを誘惑しているのだという高揚感のほうが高まっていた。
クラウドの喉仏が動き、私の身体を見る目つきは男のそれで少しギラついている。
そんな視線を心地よく感じながら、私はクラウドの前に再び跪いた。
そしてしなだれるように首に腕を絡ませてクラウドの顔を見上げる。
あざとく胸も押し当てて。
そんな挑発するような真似をしてクラウドが目を見開いた。
自分でも驚く。
でもこんなにも大胆になれるのはクラウドの自由を奪っているからだと思った。
クラウドが何もしてこないという安心感が自分を大胆にしているのだと思った。
私はクラウドを見つめながら、ちろりと舌で胸の小さな突起を押し舐める。
より一層眉間にしわを深く刻んだ顔を見て、思わず笑みが溢れた。
気を良くした私は舌で執拗に愛撫をしつつ、空いている片方は指で優しく撫でまわした。
クラウドはもう、くすぐったそうに笑わなかった。




押し寄せる快楽の波に息づかいが荒くなるのを止められない。
首が弱点だと悟られてからは執拗にそこを攻め続けられていた。
首筋にキスをする控えめなリップ音を耳で感じ、甘やかな匂いを鼻で感じ、押し当たる豊かな胸を肌で感じて声を我慢するのも段々とキツくなってきた。
けれど、男の自分の喘ぎ声なんて聞くに堪えない。
そうした自分は普段ティファには声を我慢するなと言っているのだから勝手なものだと思う。
しかしその我慢もそろそろ限界か……
そう思ったとき、それまで執拗に首筋への愛撫をしていたティファが俺から離れて立ち上がった。
じっと俺を見つめる彼女に俺も視線を外せずにいる。
次はなにを仕掛けてくる気だ?
緊張する俺の前で、ティファは着ていたTシャツに手を掛けてゆっくりと脱ぎ始めた。
思わず息を飲む。
続けて履いていたハーフパンツも脱いだ。
どこか恥ずかしそうにしながらもそれでもゆっくりとした所作で見せつけるように脱ぐ様は、目の前の男を挑発しているようにも見えた。
そして俺はその挑発にあっさりと乗っかる。
思わず生唾を飲み込んでしまったのは、俺が見たことないような下着姿を晒したからだ。
黒の細い肩紐は透明感のある肌をより強調させ、胸元のレースはティファの豊かでハリのある胸に更なる華を持たせている。
そしてなにより生地の薄さが普段身につけているそれと全然違った。
身体のラインがわかるほど透けていたのだ。
はっきり言ってエロい下着。
透け具合からほぼ裸同然なのに、ただの裸でいるよりもいやらしく見える。
まろやかな線を描く乳房はその形がわかるほどはっきりと見えているのに、レースのせいで見えない乳首。
薄ピンク色のそれが今は紅くいやらしく尖っているのでは?と想像を煽るのだ。
そうしたティファを目の前にしながらも、何も手出しが出来ない状況に俺はただただ焦れた。
これではエサを待てと言われている犬みたいなものだ。
いや、犬なら涎を垂らしながらも健気にまっていればいずれエサにありつける。
今の俺は犬というよりも罠に嵌った飢えた狼だ。
食べられそうで食べられないご馳走をギラギラとした目つきで見るしか出来ない。
そうした俺の欲にまみれた視線にさえ、ティファは悦んでいるようにも見えた。
ティファ優位のこの状況に少し悔しくなる。
そんな俺の心のうちを知ってか知らずか、ティファは再び俺の前に跪き、今度は俺の首に腕を巻きつけて甘くしなだれてきた。
俺の反応を楽しみ弄ぶかのように顔をあげて見上げてくる。
さらなる挑発に驚きを隠せない。
そんなティファを見下ろすと、ピンク色の舌を小さく突き出しながら俺の乳首を押し舐めている。
その姿にゾクゾクと全身が粟立った。
思わずキツく眉を顰めて、声が漏れそうになるのを耐える。
そんな俺にティファは空いているもう片方の乳首を指でやさしく撫ではじめた。
緩いレースの胸元から見えたティファのやわらかで豊かな胸は俺の腹に押し付けられて潰れている。
悩ましい光景に下半身は熱が集中し、自身のモノが猛然たる形となっていくのを感じた。
それをティファ自身も自分の腹で感じたのか、愛撫するのを止めてふと俺の下半身を見る。
スエットの柔らかい生地のせいで俺のモノは卑猥なほどスエットを押し上げていた。
それを見たティファが顔を真っ赤にする。
いや待て待て、恥ずかしいのは俺のほうだ。




スエットを押し上げている形状を目にしてティファは顔を赤らめた。
気持ちよくなってもらう為にあれやこれやとやってきたが、いざクラウドが興奮しているのを形として見るとそこはやはり恥ずかしい。
だから最初こそ目のやり場に困ってなんとなく視線をあちこちと落ち着かなく彷徨わせていたが、今日本来の目的を思い出してティファは自身を奮い立たせる。
男の人が彼女にしてもらいたいこと一位。
雑誌の謳い文句を頭の中でリフレインさせながらティファは覚悟を決める。
クラウドのスエットに手を掛けた。
「! ちょ、ちょっ、ティファ!!」
クラウドが慌てた様子で声を上げ、制した。
こんなに動揺するクラウドを見るのは初めてでティファは戸惑う。
「な、な、なにをするつもりだ」
顔を赤くするクラウドにそう聞かれて、ティファは困ったような顔をした。
なんて答えればいいのかわからない。
正確な名称を言えばいいのか、それとも言葉を濁したほうがいいのか。
どちらのほうが引かれずに済むのか。
いやもうすでに引かれているのかもしれない。
ここまでやらかしたのだから。
それなら、覚悟を決めるしかない。
ティファは小さな声でポツリと言った。
「男の人はその……こういうの好き、なんでしょ?」
言った瞬間、恥ずかしさで一気に顔が火照る。
今さらだが、はしたない女だと思われたかもしれないと思うと顔も上げられなかった。
そうしたティファの頭上でクラウドの困ったような口ぶり。
「い、いや、その…」
はっきりと言いにくそうなその声に顔を上げると、クラウドもまた自分と同じく赤い顔をしていた。
そこに私に対する嫌悪感みたいなものは感じられず、ひとまずホッとする。
だから改めて……
「あの…クラウドがイヤじゃなければ……」
そう言ってスエットの上からそっとクラウドのモノを包むように触れた。
ピクっと震えたそれを心配してクラウドを見る。
彼は先よりも呼吸を乱しながら言った。
「…イヤ、じゃない」
荒くなる呼吸を必死に抑えこもうとしながらも、自分を見つめる視線は情欲を隠すことも出来ずに雄の目つきをしている。
それが妙に色っぽくて、ティファはまた胸がドキドキとした。
そんな胸の高鳴りを悟られないように視線を伏せ、クラウドのスエットを脱がせる。
スエットよりもさらに薄い生地のボクサーパンツはクラウドの興奮したモノをより強調させていた。
男の人のデリケートな部分。
ティファはボクサーパンツの上からやさしく撫でる。
触れるたび、ピクピクッと反応するそれを心配しながらもティファはやさしく包むようにしながら唇をそっと押しあててキスをした。
「…っ!」
クラウドが咄嗟に出してしまった声にならない声はティファの耳にしっかりと届く。
そして手の内ではクラウドのそれがさらに硬さを増したのが分かった。
気持ちいいと感じてくれていることがうれしい。
もっともっと気持ちよくなってもらいたい。
ティファはボクサーパンツの中で窮屈そうにしているモノを出した。
途端、勢いよく飛び出たクラウドの屹立したモノ。
重力に逆らって角度をつけていたそれにティファは思わず息を飲んだ。
マジマジとクラウドのそれを見たことがなかったのだ。
手を添えてもいないのにピクピクと蠢くそれは赤黒く、血管が浮き出ている様は雄々しくて、なんだかとてもいやらしい。
そしてなによりその大きさに驚いたのだ。
今までこんな大きなモノが自分の中に入っていたの?
信じられないと思う気持ちと同時に普段のそうした行為を思い出して、ティファの中心がきゅんと切なくなった。




俺だって普通の男だから、ティファに口でしてもらえたら……と思ったことはある。
そうさせる姿を夢想したことなど数えきれないほどだ。
でも無理にさせるものでもない。
そうも思っていたから、だから別段今までのセックスに不満はなかった。
それなのに今日ティファは自分からそれをしようとしている。
恥ずかしがり屋の彼女がだ。
そのティファが俺を気持ちよくさせたいと、そう思ってくれた気持ちがなにより嬉しかったんだと俺は今改めてそう思った。
だから……
「ティファ、無理しなくていいんだぞ」
俺の勃起したモノを前にして固まってしまった彼女にそう言った。
以前、ティファの恥ずかしがる姿見たさに、直接ではなくズボンの上からだが勃起した自身のモノを触らせたことはある。
でもこうしてしっかりと見たのはたぶんこれが初めてだ。
あまりのグロテスクさにビビったか。
クラウドはそう心配したが、ティファは顔を赤くしながらもふるふると首を横に振った。
「ううん、無理してないよ。ちょっと…びっくりしただけ」
そう言って恥ずかしそうに笑う。
(……それ、可愛すぎるだろ)
そう思う俺の前で緊張が解れたらしいティファが照れた顔のまま言った。
「クラウドの、おっきいね」
「……」
ティファは天然というか純というか……
俺は両手が自由なら目を覆いたかった。
そんなことを言えば、男がアホみたいに興奮することをティファはわかってない。
現に俺のモノはティファのそんな言葉に反応して更に硬さを増している。
それを目にしたティファが驚きで目を見開いた。
「っ!また大きくなっ…」
「ティファ、それ以上言うな」
「えっ?」
「男は…大きいと言われるとより興奮するんだ」
男の単純さを露呈する形となってしまった。
そうした俺の前でキョトンとしていたティファがクスッと笑う。
「そっか〜、そうなんだ」と独りごちながら頬をピンク色に染めて笑っている。
ティファは本当にかわいいなと思った。
その彼女はひとしきり納得してから改めて俺のモノを見る。
そうする目はやわらかで、それはまるで愛おしいものを見るかのようで。
そんな目をして見るような代物じゃないぞと思う俺の前で、ティファは硬直したモノをそっと包むように触れた。
直にティファの暖かい手でやさしく包まれるその感覚はなんとも言えないぐらい気持ちがよくて思わず吐息が漏れる。
そうした俺の反応をみてホッとしたのか、今度は指先で恐る恐る俺の亀頭を撫でた。
「ッ…!」
敏感な部分に触れられて反射的にビクッと身体が反応し、思わず声が漏れでる。
そしてティファもまたそうした俺の反応にビクッと身体を震わせた。
しかし自分の指先がぬるっとしたことに気づいたのか、ゆっくりとその指先を引いた。
俺の亀頭とティファの指先の間を透明な糸が引く。
俺の先走り汁だ。
それを見てティファが顔を真っ赤にする。
そうした事態に恥ずかしいのはもちろん俺のほうだが、今はそんなティファの恥ずかしがる姿さえ興奮する材料となっている。
さらなる先走り汁が溢れ出るのを止められずにいた。
ティファはテラテラといやらしく光る亀頭をしばらく見つめた後、ゆっくりと顔を近づけ、そしてそこを舌で舐めた。
その一連の流れにゾクゾクと電気が走り、思わずキツく眉を寄せて唇を噛みしめる。
そうした俺の反応を気にしながらも、ティファはソフトクリームを舐めるように俺の亀頭を、さらには陰茎をも舐めた。




静かな部屋の中では、クラウドの荒い息づかいだけが部屋の空気を震わせていた。
そうした興奮する息づかいを頭上で感じながら、ティファはクラウドの大きくなったモノを丁寧にやさしく舐め続けていた。
先端だけじゃなく、血管が浮き出ている側面もソフトクリームを舐めるようにペロペロと……
「っ…くっ……、ッ!」
控えめだが断続的に聞こえてくるクラウドの興奮した息づかいに、自身の身体も熱く火照るのを止められずにいた。
履いている下着がじんわりと濡れていくことも……
舐めながら顔を上げると、熱っぽい蒼の瞳が切なげに私を見つめている。
それを見て自分の中心がキュンと疼いた。
クラウドのモノは手の内でピクピクと震えている。
それがさらなる興奮を求めているように感じて愛おしくなり、ティファは恥じらいながらも口を大きく開けてクラウドのモノを頬張った。
「…くっ!」
息づかいだけを荒くしていたクラウドが短く言葉を発する。
更に大きく質量を増したそれに歯を立てないように気をつけながら、雑誌に書いてあった通りに口を窄めながら吸ったり舐めたりと口での愛撫を続けた。
果たして自分のやり方がこれで合っているのか?
口を大きく開けてそれを咥えている姿を見られるのはとても恥ずかしかったが、クラウドの反応が気になってそっと見上げた。
「…ティファ」
目が合ったクラウドに切なげに名を呼ばれた。
眉間に深く皺を寄せ、いつもはキュッとしまっている精悍な唇を薄く開いてそこから苦しげな吐息を漏らしている。
この状況が辛いのかと心配になる。
「クラウド、苦しいの?」
愛撫を一旦止めてそう聞くと、
「いや、すごく気持ちいい。気持ち良すぎてイキそうだ」
クラウドは恥ずかしそうに、でも恍惚とそう言った。
はっきりとそう言われて、ティファは恥ずかしいのと嬉しいのとで顔を紅潮させた。
そして…
「……イっていいよ」
”イく”だなんて普段なら恥ずかしくて言えないことを伝えると、ティファは再びクラウドのモノを口に咥えて愛撫を再開した。
「…っ! ティ、ファっ」
クラウドが驚きながらも、また始まった快楽に眉を顰めながら口を真一文字に結ぶ。
質量も硬度も増したそれを嬉しく思いながら、ティファは愛撫を続けた。




俺のモノを咥えるティファは想像していたよりも遥かにいやらしく官能的だった。
口の中にすべてを含むことができないそれを手でやさしく包むようにしながら、口と舌を使って一生懸命に俺を気持ちよくさせようとしている。
そういうシチュエーションだけで俺は十分に欲情をそそられたが、そろそろ強めの刺激が欲しくなっていた。
ティファの中で想いのままに激しく腰を打ちつけたい欲望に駆られた。
しかし今は両手を後ろ手に縛られて自由が効かない身。
「…ティファ」
自然と出る切なさが表れた声音で名を呼ぶと、ティファは目線だけを上げて見つめた。
「俺、そろそろ…」
そう言うと、ティファは僅かに頷いた。
縛っていた俺の手首を解放してくれる、そう思っていたのだが……
「…っ!!」
ティファは口での愛撫にスピードをつけた。
それまでの緩やかで律動的な動きから一転、射精を促す集中的な動き。
俺は慌てた。
マズイ。
このままだと俺はティファの口の中に出してしまう。
初めてのフェラチオでさすがにそれはできない。
俺は快楽に飲まれそうになりながらも、ティファに必死で訴えた。
「…ティファ、ダメだ、離せっ」
だけどティファはやめない。
それどころか、僅かに首を横に振って俺の言葉を否んだようにも見えた。
「…くっ!」
油断すると出てしまいそうで歯をくいしばる。
でも頭の片隅で、このままティファの口の中に出してしまいたいとも考えていた。
口内射精まではさせられないという思いはもちろんあったが、自身の精液で綺麗なティファを汚したいという思いを持っていないわけではない。
そうしたジレンマに長い間揺らいでいたように思っていたけど、実際はあっけないほどに俺は自分の欲望を満たす形となった。
というよりも、自身で腰を動かし射精のコントロールができる状況と違い、快感の波が読めずに不意をつかれて出してしまったと言ったほうが的確か。
どちらにせよ、俺は彼女の名を口にしながら思いの丈を吐き出していた。
頭の中を真っ白にさせながら腰を震わせ、白濁とした精液を吐き出す。
我慢に我慢を重ねた後の至高の瞬間。
なにも考えられず、しばしその余韻に浸る。
そうしてから徐々に現実を取り戻し、はっきりとした意識を持ったのは、俺の足の間で跪いたままでいるティファを認識した時だった。
ティファは不自然に小さな口を真一文字に結び、両手をそこに添えている。
自身が出した精液を口で受け止めたままなのだとわかった。
焦って、拘束されていた両手を勢いよく振り解く。
痛くないようにとそこまでキツく縛っていなかったのだろう。
それはあっさりと解けた。
そしてすぐさまベッドのサイドボードに手を伸ばし、ティッシュを数枚勢いよく抜き取ってそれをティファの口元に差し出す。
「ティファ、ごめん! ここに吐き出して」




口の中に放たれたドロっとした熱いもの。
クラウドのそれを口の中で受け止めたものの、それからどうしたらいいのかわからずティファはそのままでいた。
すると、恍惚としていたクラウドがハッと我に返ったかと思うと、今度は慌てた様子でサイドボードからティシュを抜き出してそれを私の口元に差し出す。
「ティファ、ごめん! ここに吐き出して」
そうクラウドに言われたが、本人を目の前にして吐き出すのも躊躇した。
雑誌には無理に飲む必要もないけど飲んであげればもっと喜ぶ、と書いてあったように思う。
ティファは少し考えを巡らせた後、飲むという選択肢を選んだ。
もちろん自ら好んで飲みたいものとは言い難いものだったが嫌悪感もない。
目の前ではこちらの考えを読めずにただ心配そうにするクラウドの顔がある。
喉に絡みつきそうな重いそれを少しずつ流し込むよりは一気に飲み下したほうがいい。
そう判断したティファはゴクリと喉を鳴らさんばかりに飲んだ。
そうする私を見ていたクラウドが驚いた顔をしている。
そんな顔を見ていると急激に恥ずかしさに襲われた。
照れを隠すように笑ってごまかす。
「…飲んじゃった」
今の私の顔はきっとすごく真っ赤だ。
これまでの大胆な行動(自分比だが)が、今になってとても恥ずかしくなった。
クラウドと目を合わせてられなくて俯くと自身のキャミソールが目に飛び込む。
これ見よがしな胸の谷間が更に羞恥心を煽った。
今更隠すのもそれはそれで恥ずかしかったが、でもなにかせずにはいられなくてそっと腕で隠した。
「…ティ、ファ」
名を呼ばれる―― というよりも無意識に呟いた感のあるそれに顔を上げる。
同時にクラウドの腕が私へと伸び、アッと思った時には視界が反転し、私はベッドの上に押し倒されていた。




今までにないくらい積極的にあの手この手で俺を煽り、最後には大胆にも精液まで飲むということをしてきたティファ。
その彼女が今になって恥ずかしそうにしている。
俯き、散々俺に見せつけていた胸を隠すようにしたのを見て、思わずゴクリと喉を鳴らす。
恥じらうその姿にムラムラと欲情した。
出すもの出して落ち着いていた自身のモノは、いとも簡単に硬さを取り戻す。
そう意識した時にはすでに俺はティファをベッドに押し倒していた。
急に押し倒されて驚くティファの首筋に素早く顔を埋め、先までのお返しとばかりに舌でねっとり舐めあげる。
「…あっ」
漏れ出た甘い声が更に情欲を煽ってくれた。
今の今までティファに触れることを我慢させられていた分、事が早急になっていく。
キャミソールの上から豊満な胸を揉みしだき、だけどそれだけでは当然足りなくて、キャミソールを捲りあげて胸を露わにする。
たわわな果実を思わせる白い胸、その頂きにある乳首はいつものピンク色ではなく艶やかな赤に色を変え、そしてそれはぷっくりと膨らんでいた。
性的興奮を誘うそれを舌で転がす。
同時に下の下着に手を入れた。
「あっ!やっ…」
ティファが慌てたようにそれを阻止しようとしていたが、俺の指がそこに触れたのが早かった。
指がぬるっとした感触に包まれた。
想像し得なかったそれはあきらかに官能的な湿り。
手を引き抜き、自身の指先を確認する。
指先はティファの愛液でいやらしく濡れていた。
「もう…こんなに?」
思わずそう呟く。
愛撫らしいことをほとんどしていないのに……、そう思いながらティファの顔を見ると、ティファは顔を真っ赤にして俺の視線から逃げるように横を向いた。
「あ、やっ…見ない、で」
恥ずかしくてたまらないとする仕草にまた興奮する。
こうしたティファを見ると、もっともっと恥ずかしがらせたいと思うのはいつものこと。
俺は素早くティファの下着を脱がせて、すでに十分潤っているそこにそっと指を一本差し入れた。
「んっ…!」
ティファが甘やかな声を上げる。
それに気をよくした俺は愛液を指に絡ませながら膣のなかで指を動かした。
くちゃくちゃと淫らな音をわざとたてながら……
「…俺のをしゃぶっただけでこんなに濡らしたのか?」
耳元でいやらしく煽る。
「や…っ……違っ…」
ティファは泣きそうなほどに顔を赤らめながら首を振って否定しようとするも、身体は正直に反応している。
指での愛撫に、ティファはトロトロとした愛液を溢れさせて俺の指をさらに濡らした。
甘い声で鳴きながら淫れるその姿が可愛くて愛おしくてたまらない。
そしてそんなふうに散々煽っておきながら、早くも俺自身が我慢できなくなる始末。
指を引き抜き、代わりに自身のモノをティファの中に一気に押し入れた。
ティファは身体を弓なりに反らせながら一際高く甘い声を出す。
そして無意識に逃げる腰。
俺はそんなティファの細い腰を逃さないとばかりに引き寄せ、夢中で自身の腰を打ちつけた。




あれから休む間もなくクラウドに抱かれた。
イッてはすぐに硬さを取り戻し腰を振るを繰り返すクラウドに私は幾度となくイかされた。
果てることを知らない彼の精力。
最後は私の意識が飛んだ。
そして気付いたら、私はクラウドの腕を枕に抱きしめられていた。


「…大丈夫か?」
そう言って苦笑するその顔に申し訳なさを滲ませているも、たぶんそこまで悪いとは思っていない。
アクの抜けた妙にスッキリとした顔がそう見えさせているのか。
そしてあんなに身体を動かしたにも関わらず、そこに疲れた様子がないのも驚きだ。
常々思っていたことだけど、改めてクラウドのタフさに舌を巻いた。
私が大丈夫だと頷くとクラウドはほっとした様子をみせた後、少し上体を起こしてサイドボードに置いてあったミネラルウォーターを飲んだ。
程よく筋肉のついた男らしい上半身はまだ裸のまま。
自分自身もすべて脱がされたままの状態で、熱が落ち着いた今はその状態がただただ恥ずかしい。
だからシーツをそっと手繰り寄せて、彼に気付かれないように剥き出しになっている肌を少しでも隠す。
でもそんなことをする私の気持ちはやっぱりクラウドにはお見通しみたいで、私を見てちょっと笑うと飲んでいたミネラルウォーターを差し出した。
「飲む?」
私は赤くなっているであろう顔で頷いてそれを受け取り、ゴクリと喉を潤した。
気持ちが少し落ち着く。
そうしたところでクラウドが改めて私を見て言った。
「じゃ、落ち着いたところで今回の経緯について話してもらおうか」
クラウドがどことなく楽しげなのは私の気のせいだろうか?
でもそう聞かれることは想定済みだったので、私は素直に白状した。


事の発端はセブンスヘブンに来た客の忘れ物。
同じものを友人も買っていたからそれは処分して欲しいという電話があった。
忘れ物は封が切られていない紙袋に入っていた雑誌。
処分するのならとあまり深く考えずに袋から出したところ、その雑誌の表紙を飾る際どい謳い文句にティファは一瞬にして固まった。
―― 愛するセックス、愛されるセックス
上半身だけだが裸の男女が抱き合っている表紙とタイトルを見てティファはひとり顔を赤くした。
そうしたことに未だ慣れていないから顔を赤くはさせるけど、拒絶反応があるわけではない。
いや寧ろ興味はある。
ただ自分で買えないだけで……
だから自分では買えないだろうその本の中身が気になって、掃除の途中だったがティファは近くにあったスツールに腰を下ろして雑誌を捲った。
そこには自分が知っている体位や知らない体位、キスや前戯、後戯からピロートークまでセックスに関することが懇切丁寧に解説されていた。
またそれらが実際のモデルを使った写真で体現されていたり、実写だと過激すぎる描写はイラストでやり方を紹介してあったりと、とにかくティファにはいろんな意味でカルチャーショックなものばかりだった。


「…確かにエロいな」
クラウドがその雑誌を見てみたいと言ったので、ティファは自室から雑誌を持ってきて見せたところクラウドがそう言った。
「ある意味、男のエロ本よりすごい」
リアルなイラストが載ったページを見ながらクラウドは更に感想を漏らす。
ティファはクラウドの放ったワードに驚いた顔を向けた。
「クラウドも…エッチな本を読んだりするの?」
そういうのを見たりするイメージがなかったのだ。
するとクラウドは少し苦笑いながら、「そりゃ俺だって一応男だから」と言った。
男の人がエッチなことに関心を示すのは極普通のことだと、いくら奥手のティファでもそれぐらいは知識として持っている。
しかしどうしてもティファにはクラウドがエッチな本を読んで興奮する姿を想像できなかった。
「そっか…クラウドもエッチな本、見るんだ…」
他意もなく率直な感想を口にする。
するとクラウドが焦ったように言った。
「む、昔の話だぞ」
「今は見てないの?」
不思議に思ってそう聞き返す。
するとクラウドもまた同じように不思議そうな顔をした。
「必要…ないだろ? 今はそこまでして自分で慰めなくてもいいし…」
ティファは頭の中に疑問符を浮かべる。
が、すぐにその意味を理解し、わかりやすくその顔を赤らめた。
今話題にしている雑誌にも説明されていた自分で性的快感を得る行為。
所謂、手淫や自慰、一人エッチと呼ばれるものだ。
雑誌には男女それぞれにやり方がイラスト入りで解説されていたのも手伝って、ティファはクラウドの自慰をリアルに想像してしまった。
ひとりでカアッと顔を熱くさせる。
するとすかさずクラウドが、
「なあティファ、今なにを想像したんだ?」
そう聞くクラウドはティファの反応を明らかに面白がっていた。
これ以上からかわれない為にもティファはなるべく動揺を見せずに答える。
「な、なにも想像してないよ」
「本当か?」
「…本当に!」
はっきりそう言い切られ、クラウドはふーんと言いながらもそれ以上言及しない。
しかしその顔はにやけていて、ティファは警戒を解かなかった。
そんなティファの予感は的中。
クラウドがすっと顔を寄せて耳元で囁いた。
「今日のティファはエッチだな」
「っ! クラウド!」
そう責めてもクラウドは嬉しそうに笑うばかり。
しかも言われたことは本当にその通りだと思うから強気にも出られず、ティファは顔を赤くしたまま大人しく口を噤んだ。
―― 本当に今日の私はいやらしい
そう悄げるティファにクラウドは苦笑う。
そして……
「俺はエッチなティファも好きだけどな」
言って、ティファの頬にキスをした。
フォローしてくれているのか、からかっているのか。
どちらなのかわからないけど、クラウドが嬉しそうに笑うからフォローしてくれているとティファは思うことにした。


肩を寄せ合い、髪を優しく撫でられながらティファはクラウドを見上げた。
「ねえクラウド」
「ん?」
「今日はその…」
クラウドに一番聞きたかったこと。
「…気持ちよかった?」
初めてした口での愛撫。
クールダウンした今、自分がしてきた数々のそれは思い返すととても恥ずかしい。
けれどクラウドの感想が聞きたくて、ティファは顔を火照らせながらもそれを待った。
そんなティファを見て、クラウドは目を細めると……
「すごく気持ちよかった」
ティファは赤い顔のまま、そう応えたクラウドを見る。
やさしい眼差しと目が合い、ティファは安心したようにはにかんだ。
そんなティファにクラウドが言う。
「けど……」
「けど?」
クラウドはティファの肩を抱き寄せる。
「俺はやっぱりティファを気持ちよくさせるほうが好きだし、それを見て俺自身も興奮する、かな」
それはクラウド自身、今回改めてわかったことだった。
「だから……」
クラウドの顔がニヤリとする。
そんな顔をみて、ティファは不穏な気配を感じ取る。
クラウドがこんな顔をする時はティファにとって大抵要注意なことが多いのだ。
「…だから?」
幾分身持ちを固くしながらそう聞き返すと、案の定、クラウドはハンカチをチラチラ見せつけるようにして言った。
「今度は俺がティファを縛って好きなことしていい?」
「ええっ!?」
ティファは驚く。
そして自分がクラウドにしたことを思い返して、思いっきり首を横に振った。
「や、やだ! クラウド、エッチなことするもん!」
「当たり前だろ。エッチなことをするために縛るんだから」
堂々と開き直られた。
こういう場合、自分が相手を縛っておきながら自分がされるのはイヤだと拒否するのはやっぱりズルいだろうか?
そんなふうに黙るティファにクラウドは苦笑いながら言った。
「大丈夫だ、痛いことは絶対しないから」
なにが大丈夫なのかわからないけど、この状況でクラウドに引き下がるつもりがないのはティファが一番よく分かっている。
だから……
「…一回だけなら」
渋々出した妥協案。
それでもクラウドは露骨にパッと顔を輝かせた。
そして雑誌を捲りながら、
「俺も勉強しておかなきゃならないな」
「……」
こういうところを見るとクラウドも例に漏れず、男って単純だなとティファは思う。
それは可愛くもあり、愛おしくもある。
大人の男の体つきをしながら子供のように雑誌を捲るクラウドにティファは笑った。
「あまりエッチなことしないでね」
そう言われて、クラウドは雑誌から顔を上げて真顔で答えた。
「それは約束できない」
「クラウド!」
「…わかった、なるべく善処する」
「……」
あまりあてにならない言葉でこの場を丸く収めようとするクラウドに呆れながらも、ティファは頭の片隅でこうも思うのだ。
――クラウドが喜んでくれるなら多少のエッチなことはいいかな、と


初めてR18をつけたお話です。
たぶんそれほどエロくないけど、直接的な表現と淫語をたくさん出しているので付けました。

(2022.12.18)

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