もっと一緒に

仲間たちの手前、普段はあまり二人きりになる時間はないけれど、この時ばかりは堂々と一緒にいられる。
今日はクラウドと買い出し当番。



他愛ないおしゃべりをしながらの買い物は嬉しくて楽しいひととき。
ふたりであれこれと商品を選んでいると、新婚さんみたいと私はひとり密かにそんなことを思い、そうした状況を楽しんでいた。
だけどそんな時間はあっという間で――

「買い物も済んだし、そろそろ帰ろうか?」
買い物あとの休憩。
みんなには内緒のソフトクリームを食べ終わって、クラウドはそう言った。
あなたからの“帰ろう”が寂しくて、私はついウソをついた。
「あ、あのね、調味料買い忘れたみたい……」
「ティファが忘れるなんて珍しいな。じゃあ店に戻ろうか」
ウソをついた罪悪感を胸の奥底にしまって、また束の間の買い物をする。
「今度はもう大丈夫だな?」
「あ、……シドに頼まれてた煙草」
またウソをついてしまった。
呆れられたかな、と心配になってクラウドの顔色をそっと窺う。
けれど、あなたは碧い瞳をやさしくして微笑んでくれた。
「じゃあ、また戻るか」
クラウドのやさしさに甘えた。
「もう、ないよな?」
三度目はからかわれ気味に聞かれる。
さすがに三度のウソはつけなくて……
「う…ん、……もう大丈夫」

楽しい時間はあっという間。
そう思った私の手を大きな手がやさしくつかむ。
「帰ろう、ティファ」
繋いだ手に引かれて歩き出した道は、飛空艇へと戻るには少し遠回りな道。
「クラウド、そっちは……」
遠回りだよと言いかけた私にクラウドは甘やかに、そして少しだけからかうように碧い瞳を輝かせた。
「俺ともっと一緒にいたいんだろ?」
私のついていたウソはバレバレだった。
恥ずかしさですっかり足が止まってしまった私にクラウドはふっと笑う。
「俺は最初から帰るときは遠回りするって決めてた」
―― 少しでも長く一緒にいたかったから
そう付け足された言葉に私は自分の顔が熱を帯びていくのを感じた。
そんな私を見て、クラウドは嬉しそうに笑う。
「ティファ、顔赤くしすぎ」
「ゆ、夕焼けのせいよ……」
慌てて三度目のウソをついたけれど、
「そうだな、夕焼けのせいだな」
肩を震わせながら笑われて、私の三回目のウソもやっぱりクラウドにはバレバレだった。



オレンジ色の夕焼けの中をゆっくりとふたりで歩く。
前方には長く伸びたふたつの影。
その影がひとつに重なるたびに私の顔は赤く染まり、その原因を作る彼にからかわれる。
初夏の風に吹かれながら、大好きな彼と一緒に帰る道。
それはふたりの時間を少しだけ延ばしてくれた幸せな遠回りの道。


2006.7月の拍手SS。
旅が終わった後はこんなふうにほのぼのとしてたらいいな。

(2006.07.01)
(2018.10月:加筆修正)

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