Coating Choco

甘いチョコレートの匂いがするキッチン。
珍しく髪を結い上げている彼女の後ろ姿。
―― 明日はバレンタイン



甘いチョコの匂いと無防備に晒された彼女の甘い後れ毛は、俺をキッチンへと誘うには十分な動機づけ。
そっと足を踏み入れた。
「ティファ、何してるんだ?」
そう声をかけると、ビクッと震えた彼女の背中。
直後、勢いよく振り返ったかと思うと彼女は両手をパタパタと慌ただしく振った。
「クラウド!? ダメダメ! 入って来ないで!!」
そんな彼女の後ろのテーブルにはたくさんの材料や器具が並んでいる。
それらを必死に隠そうとしているけれど丸見えだ。
そんなところが可愛くて、ついついからかってしまいたくなる。
こんな男でごめんな、などと思いながら彼女の手を掴み、嫌がる肩越しにテーブルを見た。
「俺のだろ? ありがとな」
「もう! 明日まで内緒にしておくつもりだったのに!」
ぷくっと膨らませた頬に愛おしさは無限大。
これだから彼女をからかうのは止められないと、心の中でいつもの言い訳をする。


「今年はどんなチョコ?」
一年に一度のバレンタインにティファは毎回いろんなチョコをくれる。
甘いものはそんなに得意ではないけれど、彼女が俺のためだけに作ってくれるそれは特別だ。
「今年はね、コーティングチョコレートよ」
「コーティング?」
「うん。苺やマシュマロをチョコでコーティングするの」
興味を惹かれて再びテーブルを見ると、これからコーティングされるであろう材料が並んでいる。
その中にすでに溶かした状態のチョコレート。
「これに絡めるのか?」
「そう」
「このチョコ、まだ熱い?」
「ううん、人肌程度の温かさだけど」
どうしてそんなことを聞くのかと、不思議そうな顔をする彼女の手を俺は掴んだ。
「ティファ、人差し指立てて」
キョトンとしながらも素直に従う。その彼女の人差し指をチョコに絡めた。
「えっ? ちょ、ちょっとクラウド!?」
それまで為されるがままにしていた彼女が一転して慌てる。
そんな彼女に笑んでから、チョコでコーティングされた彼女のその指を舐めた。
「ん。甘い」
苺やマシュマロもいいけれど、この組み合わせにはきっとどれもかなわない。
俺はチョコの味はとっくにしないその指をいつまでもしゃぶった。
「あ、あのねクラウド、なんかこれとっても恥ずかしいんだけど……」
執拗に指をしゃぶられてるティファの顔は真っ赤だ。
また、髪を結い上げているせいもあって、白い首筋までもが赤く染まっているのがよく見える。
その色欲をそそられる姿に俺の妄想は制御不可能。
「じゃあ、交代」
そう言って、今度は俺の指をチョコレートに絡め、それを彼女に舐めさせた。


指先に感じる彼女のやわらかい舌の感触。
俺の指を口に含みながら、目元をうっすらと赤く染めて見つめるその上目遣い。
想像以上のエロティシズムに俺は言葉をなくす。
そんな俺の手を掴んでティファが言った。
「なんでクラウドが顔赤くするのよ」
「……男の性だ。気にするな」


2007年バレンタイン記念小話第一弾はクラティ。
指舐めエロい。

(2007.02.13)
(2018.10月:加筆修正)

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