月明かりが照らす平原に一軒の民家。
空き家でないことは窓からの灯火で知り得た。
その家主にバレないように抜き足差し足、住み家から少し離れた場所にあるチョコボ厩舎に足を踏み入れる。
「クラウド、今日はここで野宿な。まあちょっと匂うけど屋根付きだし、贅沢は言えねーもんな」
今夜の寝床はここと決めたザックスは山と積まれた藁を平らに整える。
―― クエッ
返事をしたのは語りかけた相手のクラウドではなく、この厩舎の主。
ザックスは苦笑しながらチョコボの頭を撫でた。
「悪かったよ、匂うだなんて言って」
機嫌を損ねてしまったらしいチョコボに謝って、ザックスは近くのダンボールに入っていたギザールの野菜を与えた。
「ほら、これで勘弁してくれよな? て言ってもこの野菜はもともとおまえのだけど」
―― クエエッ
ザックスが特別用意した訳でもない野菜をチョコボは満足そうに食べた。
それを見ながらザックスは厩舎入り口に座らせていたクラウドへと近寄る。
「よかったなクラウド。今夜はここに泊まっていいってさ」
ザックスにチョコボと会話ができるなどという特殊能力はもちろんない。
持ち前の、なんでも好意的に捉える性格がそう言わせた。
そんなザックスは、だらりと力ないクラウドの腕を自分の肩に回して立ち上がらせると、足取り覚束ない友をゆっくりと整えた藁へと導く。
「うう…ああ……」
「ああ大丈夫だ。今夜は安心して寝ていいぞ。俺もコイツもいるからな」
クラウドを座らせてからそのコイツに目をやると、野菜を食べて腹が満たされたのか早くも夢うつつといった状態だった。
「あまり期待しないほうがいいみたいだ」
苦笑し、同意を求めるように再びクラウドを見たが、その友からの返事はやはりなかった。
ザックスは自分と同じ色をした碧い瞳を見つめる。
その瞳は虚ろで、ザックスはやりきれない思いのため息をそっと吐いた。



数ヶ月前の神羅屋敷からの脱走。
あの時はまだ確かにクラウドの意識はちゃんとあった。いや正確には、あの忌まわしい実験器具の中に収められていた時点では、だ。
英雄と謳われた人物の成りの果て。
その最期を朦朧とする意識の中で見届けたのはニブルヘイムの魔晄炉内。
痛手を負わされた俺たちは逃げる隙を失い、そこに神羅の科学者、宝条の駆けつけによって運悪く人体実験のサンプルとして運び出された。
そして気づいた時には個別に入れられたガラス製の実験器具の中。
ろくに会話もできなかった俺たちは、そのガラスの壁にメッセージを刻むことで互いの意思確認をした。

―― ここから逃げよう
―― エサの時間がチャンスだ

そのチャンスはそうあった訳ではない。
魔晄漬けにされていた俺たちは、自分たちの意思に関係なく意識を手放されるように眠らされたり、呼び覚まされたりしていた。
それでもなんとか数少ない隙を見計らって、俺は計画通り飯の時間に脱出を試みた。
そしてその時にはすでにクラウドはこういう状態だったのだ。


魔晄中毒。
その名前を聞いたことはあるが、実際にそうなった人間を目の当たりにするのは初めてだ。
ソルジャーになるには少なからず魔晄の力を必要とする。だから俺自身もジェノバ細胞を体内に注入し、魔晄を照射してソルジャーになった。
しかしそれでもその量はほんの少しだ。これほどの大量な魔晄は必要としない。
魔晄には星の記憶する膨大な情報や知識が凝縮されている。
そしてそれに触れ続けていると脳のキャパシティを超える大量の知識が自身の中に流入し、結果、正常な精神状態の維持が困難となるのだ。
だからソルジャーになるためには、ある程度の魔晄による耐久性を求められる。
良くも悪くもそれに耐えうる者だけがソルジャーの資格を得られるのだ。

『ソルジャーはモンスターみたいなもんだ、やめとけ』
クラウドに言った言葉。
ニブルヘイムの魔晄炉で知った真実は、今まで信頼していた会社に対して不信感を強めるものだった。
今やこの世界を牛耳っていると言っても過言ではない自身が属していた会社。
その会社が世界に誇るソルジャーを作る要領と同じくしてモンスターを作っていたのだ。
高密度な魔晄の照射。
ジェノバ細胞の注入。
今までそれが極当たり前だと思っていたことは、実は全て異様な行為。
そんな人体実験をされても普通でいる自分はモンスターと同等なのだ。

「よろこべクラウド、おまえはまともな人間だ」
中毒になってよかったも何もないが、しかしそうでも言わなければ今の悲愴な状態のクラウドは救われないと思った。
そんな友の肩をぎゅっと抱く。
けれど、そんな化け物じみた自身の身体でもポジティブに考えればありがたいとも今なら思える。
もしも俺自身、魔晄やジェノバ細胞に対する耐久性がなければ、クラウド共々あのまま永久に神羅屋敷の住人だ。
ザックスは大きく息を吐き、藁の上に仰向けになった。


―― あの日からどれくらいの月日が経過しているのだろうか?
あまり考えないようにしていたそれが、ふと脳裏を掠めた。
神羅屋敷を出てまず驚いたこと。
それは、あの炎に包まれたニブルヘイムがその前日まで過ごしていた時となんら変わりなくそこにあったことだ。
クラウドの実家も、俺たちが宿泊していた宿屋も、村のシンボル的な給水塔も。
愕然としたのは言うまでもない。
あれは幻だったのか?
ザックスはすぐにかぶりを振った。
いやそんなはずはない。俺はあの残虐極まりない光景、黒煙と炎に包まれる村、またそうした者への憤りもはっきりと覚えている。
そう考えると答えはただひとつしかないように思えた。
村は再建されたのだ。
何のために?
そんなことはいくら考えても分からない。
けれど、それがどんな理由であれ炎上前のように再建されたのだとしたら、それはかなりの時間が経過したのだということは明らかなのだ。
俺たちはどれくらいの時間をあの地下で――

心配事は他にもあった。
クラウドの幼なじみであり、魔晄炉のガイド役を務めてくれたティファのことだ。
彼女は俺たちより先に単身でセフィロスを追い、そして返り討ちにあった。
駆けつけた時に見た彼女の姿は相当な深傷を負っていた。
しかし幸いにも僅かな意識はあった。
意識を失っただけの状態ならば、彼女も間違いなく俺たちと同じ実験の対象者だろう。けれど、神羅屋敷のどこにも彼女の姿はなかった。
「ティファ、無事でいる……よな?」
断定しきれない不安が声に現る。
すると、となりに座るクラウドが突然頭を抱えだした。
「うう…うああ……」
ザックスは慌てて身体を起こし、そうするクラウドの肩をやさしく抱いた。
「クラウド大丈夫だ。ティファは無事だ。な、安心しろ」
そう言って背中をさすり続ける。
クラウドは次第にいつもの状態に落ち着きを取り戻し、それを確認してからザックスはそっと腕を解いた。

屋敷を飛び出した頃、クラウドは中毒症状ではあったものの、時折ではあるがふと正気に近い状態に戻ることもあった。
もちろん自分が今どこで何をしているとまでは瞬時に理解はできないぐらいの状態ではあったが、それでも俺の顔を認識して名前を呟くことぐらいはできた。
しかし時間が経過するごとにそうする回数は減ってきている。
できれば一刻も早く、クラウドを病院に連れて行って適切な治療を施させてやりたい。しかし現状がそうはさせてくれなかった。
神羅屋敷から脱走したことで追われる身となった今、宿屋に泊まるどころか人が溢れかえる街の中に入ることさえ警戒しなければならなかった。
もう二度と捕まるのはごめんだ。
その思いが人目を避け、あてどもなく逃げる、そんな日々。

―― そうか!」
閃きがザックスの顔を明るくする。
そしてそうした顔をとなりにいるクラウドへ向けた。
「なあクラウド、ミッドガルへ行こう!」
「……うああ」
「ああ分かってるって。せっかく逃げ出したのにって言いたいんだろ?」
クラウドの心の声をザックスは先回りして言った。
「まあ俺の話を聞けって。俺だってそう易々と捕まるつもりはないさ。でもなクラウド、逆に考えるんだ」
自身の考えに満悦するようにザックスは声を弾ませながらクラウドの肩を抱いた。
「ミッドガルはデカい都市だ。俺らみたいに田舎から出て来た奴らがたくさんいる。あんな素性も分からない奴らがたくさんいる街なら、俺らふたりが紛れ込んだって誰も分かりゃしない」
世界に誇る軍事産業である神羅。
その本社ビルはそれに相応しく厳重な警戒態勢が引かれている。けれどミッドガルの街自体は案外そうでもない。
厳密に言えば、二層になっている街のいわゆる上流階級者の住む街はそこそこの警備が配されていても下層にある街に至っては警備がずさんなのだ。
結構いい加減なものなんだなとザックス自身、街中を歩いてそう感じていた。
また、神羅側も逃げ回っている俺たちがノコノコとミッドガルに舞い戻ってくるとは思わないだろう。
そして何より、ミッドガルならちゃんとした病院がある。
「名付けて灯台下暗し作戦だ! なっクラウド、なかなかいい作戦だろ?」
ザックスはクラウドの顔をのぞき込んだ。
異論はないのか、クラウドは何も言わない。
「よし! じゃあそうと決まれば今夜は早く寝ようぜ」
最後はそう言って、クラウドの金色の髪をくしゃくしゃと撫で回す。
そしていつものようにクラウドの瞼が綴じるのを確認し、周りに怪しい気配がないことを確かめてからザックスはゆっくりと目を瞑った。



久しぶりに安眠できる場所を確保したからか、はたまたミッドガルへ行こうなどと話をしたからなのか分からないが、夢に彼女が出てきた。
明るく輝く栗色の髪、大自然を思わせる翠の瞳、やわらかな雰囲気を持つ彼女。
―― エアリス
たくさん出会った女の子たちの中で彼女は特別だった。
共に過ごした時間は決して多くはないけれど、また逢いたい、もっと知りたいと思わせる不思議な魅力が彼女にはあった。

その彼女は夢の中でやわらかな笑みを浮かべていて、俺はそんな彼女に言った。
『俺、ミッドガルに行くから!すぐに会いに行くから』って。
すると彼女はやわらかな笑みを少しだけ曇らせた。
困ったような表情? いや違う。心配するような表情。
少なくとも、よろこんでいるようには見えない顔に俺は困惑した。
どうしてそんな顔をするんだ?
迷惑なのか?
会いに行くという約束を守れなかったから愛想尽いたのか?
いろんな疑問に押しつぶされそうになって、それを口にしかけた時――



「うう…ああ……」
クラウドの声で目が覚めた。
木造建ての厩舎は、まだ夜が明けきらない薄ぼんやりとした青さに包まれていた。
「…ああクラウド、おはよ」
ザックスは身体を大きく伸ばしながら欠伸をし、虚ろな目をして天井を見るクラウドに目をやった。
「俺を起こしてくれたのか? ありがとな。家主が起き出す前にここを出ないといけないもんな」
そう言ってクラウドに笑みかけたが、まだ少し残る夢の余韻がザックスの表情を曇らせた。
しかしすぐにそんな自身に気づいて、気を取り直すように素早く自分の頬をペチペチと叩く。
「よし! んじゃ出発するか」
自身に気合いを入れて跳ねるように身体を起こすと、チョコボがクエッと朝の挨拶とばかりに鳴いた。
人に飼われているチョコボだからか、野生のものと違いずいぶんと人懐っこい。
ザックスはダンボール箱の中からギザールの野菜を取り出し、チョコボの口元にやった。
「ほら朝飯だ。遠慮せずに食えよ」
昨夜同様、自分が用意して与えてやっているみたいな言い様。
それでも嬉しそうに食べるチョコボにザックスは笑みを零した。
「この世話になった礼は忘れないからな。今度会うときはクラウドと一緒にギザールの野菜を大量に持って来てやる。楽しみに待ってろよ」
そうチョコボに言って、世話になった厩舎内を改めて見回した。

自分たちが寝ていた場所は、今いるチョコボが入っている柵と同じぐらいの広さの中。どうやらここにはこのチョコボだけでなく、もう一匹いたようだ。
「ひとりは寂しいよな……」
どんな過酷な状況下でも自分にはクラウドがいる。
そんな思いがザックスにぽつりとそう呟かせた。
「おまえにも早く相棒が現れるといいな」
チョコボの身体をやさしく撫でて、ザックスは別れを告げた。



それからザックスたちはミッドガルを目指してひたすら前にある道を進んだ。
ゆっくりではあったけれど着実にふたりで進んだ。
そうしていくつかの深い森を抜けた後、視界いっぱいに広がる荒野を目にしてザックスの顔が輝いた。
見覚えある懐かしい景色にミッドガルはもう近いと感じたのだ。
その逸る気持ちがザックスにヒッチハイクを試みさせ、何度目かのそれに一台のトラックが停まった。
運転手は気さくなオヤジだった。
そしてその気さくな運転手は快くザックスとクラウドをトラックの荷台に乗せてくれたのだった。



整備されていない荒野の地に道らしい道はなく、トラックはガタガタと大きく揺れながらゆっくりと走る。
青い空を真っ白な雲が流れ、太陽の光が雄大な荒野に降り注ぐ。
カーラジオから流れる音楽とその景色がゆったりとした時間と調和していた。
ここを越えればミッドガル。
景色を眺めていたザックスがクラウドへと目を向けた。
「なあクラウド、ミッドガル着いたらおまえ、どうする?」
今後の策を練らなければならない。
とりあえずは基本である住居の確保だ。
すぐには見つからないだろうから、始めのうちは知り合いにでも世話にならないといけないな。
しかし幸いなことに知り合いはたくさんいる。
「俺はあちこちにあてがあるんだ」
そのあちこちの中で一番に思い浮かんだ顔はエアリスだった。
しかしクラウドには彼女の話はしていない。
秘密というわけではなかったけれど、自分の中で特別な存在の女の子だったから照れくさい気持ちが勝って言えないでいたのだ。
ザックスはちらりとクラウドの顔を窺い、少しだけ赤くした頬を指で掻きながら”たくさんのガールフレンド”でごまかした。
「みんなの世話んなって……あ、どの女の子も親と一緒に住んでるのか。そりゃマズいよな~? ダメだ作戦チェンジ!」
うんうんと唸りながら考えを巡らせていたけれど、名案は浮かびそうにもなくてひとまず話題を変える。
「う~ん、何をどうするにしてもとりあえず金だよな……」
今までは給料というものがあって生活できていた。
しかしそれを支給してくれる後ろ盾はもうない。
「商売でも始めるか。な、クラウド。俺にできる商売ってあると思うか?」
クラウドにそう聞くと同時に、ザックスはトラックを運転するオヤジにも聞く。
「なあ、おっさん! なんか俺にできるような商売知らないか?」
オヤジからは呆れたような口調で答えが返ってきた。
「なに言ってんだ若いんだろ? なんでもやってみろ! 若いうちはなんでもやってみるもんだ」
そう言って、年配者特有の人生観含めた悟りが入る。
「若いうちにいろいろ苦労してなぁ、自分の道ってやつを探すのよ」
すっかり悦に入ってしまったオヤジの話を半分に聞きながら、ザックスはクラウドへと向き直り肩を竦めた。
「なんでも、だってよ。そんなこと言われたってな……」
もっと具体的な例を求めていたけれど、オヤジからそれを期待するのは無理だと悟り、自分で考えるしかないと再び思案に暮れる。
揺れるトラックに身を任せながらしばらくの間、腕を組んで考えるザックスだったが、ふいにそれが解かれた。
「あ! そうだよな! 俺は他の奴らが持ってない知識や技術をたくさん持ってるんだよな!」
自身の絶対的な閃きが声を大きくし、胸を反らせる。
「俺、決めたぞ! 俺は“なんでも屋”を始める!」
そう言ってザックスはクラウドの側に立った。
「おい、俺はなんでも屋になるぜ。面倒なこと、危険なこと、報酬次第でなんでもやるんだ。こりゃ儲かるぞ~」
浮き足立つ気持ちがザックスに少しだけイタズラ心を沸き起こさせる。
「な、クラウド。おまえはどうする?」
ここまでは共に歩んできたけれど、これから先は別々だ――
そんなふうにも聞こえるザックスの問い。
すると、今まで黙って話を聞いていたクラウドが……
「う…あああ……」

ほんの少し、からかうだけだった。
だけど、クラウドの言葉にならない哀絶な響きの声を聞いて胸が締めつけられた。
こんな状態でもクラウドはちゃんと俺の話を聞いている。
改めてそう感じたザックスはやさしい眼差しをクラウドに向け、限りなくやわらかい声でそっと伝えた。
「……冗談だよ。おまえを放り出したりはしないよ」
クラウドのとなりに腰を下ろし、その肩をしっかりと抱きしめる。
「……トモダチ、だろ?」

楽しいことだけを分かち合うだけが友達ではない。
助けたり助けられたりするのが友達だ。
クラウドとは今までそうやって付き合ってきた。
そしてそれはこれから先もずっと続く。
「なんでも屋だ、クラウド。俺たちはなんでも屋をやるんだ。わかるか、クラウド?」
再度確認するようにクラウドの額に自身の額を押し当てた。

そんなザックスの耳に僅かに触れたヘリコプターのプロペラ音。
鋭い眼差しを素早く上空へ向けると、先程までの穏やかな青空はいつの間にか暗雲立ち込める様へと変わっていた。
その暗い雲間を注意深く探る。
遠くにだが一機のヘリがはっきりと確認できた。
それは軍のヘリ。そのヘリは一旦姿を消すように雲間に隠れる。
ザックスはそれを厳しい目で見据えると同時に素早く立ち上がり、運転席のある前方へと向かった。
「悪い、おっさん。ここで停めてくれ!」
「ああ? ミッドガルまではまだ距離があるぞ?」
「ああ、いいんだ」
このまま車に乗っていたら、確実に関係のないオヤジまで巻き添えにしてしまう。
神羅とは手段を選ばないそういう会社だ。
自分たちと関わったことで他人にまで最悪の事態が及ぶ――
それだけは絶対にあってはならないとザックスは強くそう思った。

車は停まり、素早くクラウド共々降り、オヤジに礼を言う。
そうして去って行く車を見送ってから、ザックスは身を隠すことができそうな大きな岩陰にクラウドを誘導した。
「悪いなクラウド、ちょっとここで休憩だ」
変わらずの虚ろな瞳。
本来は輝くような金色の髪も今は埃や汚れやらで少しくすんでいる。
そんなクラウドに笑みかけて、その頭をくしゃくしゃと撫でた。
力ない頭身がゆらゆらと揺れる。
それを見守りながらザックスはゆっくりと立ち上がった。
―― 待ってろよ



やっと見つけた自分たちの道。
そう簡単に行く手を阻まれてたまるかと、意を新たに力強く一歩を踏み出す。
歩き出した背中に友の手が伸びたことには気づかずに、ザックスは前だけをまっすぐ見つめて進んだ。


明るく前向きなザックスがとても好きです。

(2008.02.11)
(2018.09月:加筆修正)

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